― 2026年インバウンド最新データから考える、日本の事業者の海外展開

「海外展開」と聞くと、どんなことを思い浮かべますか?
海外で商品を販売すること。
海外向けのECサイトをつくること。
海外の展示会に出展すること。
海外企業と契約すること。
もちろん、それも海外展開の一つです。
でも、私はこれまで海外で活動してきた経験から、少し違う視点を持つようになりました。
海外展開の最初の一歩は、「商品を売ること」ではなく、人と人とのご縁をつくることなのではないか。
そして、その一歩は、必ずしも海外へ行かなければ始められないわけではありません。
むしろ今の日本には、「日本にいながら世界と出会える」大きなチャンスがあります。
英語が話せなくても、想いは伝わる
実は私は、英語が得意ではありません。
それでも海外へ行き、現地の方と出会い、自分がやっていることや日本文化への想いを伝えてきました。
でも、やはり言葉の壁はあります。
それでも、
「あなたの活動は面白いね」
「日本の文化についてもっと知りたい」
そんな出会いが生まれ、知り合いができ、次の機会へとつながっていきました。
その経験から、私は海外展開について、こう考えるようになりました。
海外展開とは、最初から「売る」ことではない。
まずは、「知ってもらう」「興味を持ってもらう」「人と出会う」「関係をつくる」
そこから始まるのではないでしょうか。
日本には、今、世界が来ている
まず、現在の日本のインバウンド市場を数字で見てみましょう。
2025年の訪日外国人旅行者数は、4,268万3,600人。
年間で4,200万人を突破し、過去最多を更新しました。
2024年の3,687万148人から、580万人以上増えています。
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2025年12月推計値)」
JNTO公式:訪日外客数(2025年12月推計値)
さらに、2026年に入っても訪日需要は高い水準を維持しています。
2026年7月の訪日外客数は、344万2,100人。
前年同月比0.1%増となり、7月として過去最高を記録しました。
また、韓国、台湾、米国、フランスなどを含む17市場で、7月として過去最高を記録しています。
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年7月推計値)」
JNTO公式:訪日外客数(2026年7月推計値)
つまり、 「日本に行きたい」という世界の需要は、2026年になっても続いている。
そう見ることができます。
インバウンドは、巨大な国内市場になっている
旅行者の増加だけではありません。
2025年の訪日外国人旅行消費額は、9兆4,559億円。
前年比16.4%増で、暦年として過去最高となりました。
訪日外国人1人当たりの旅行支出は、22.9万円。
こちらも2024年を上回っています。
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査2025年暦年(速報)」
観光庁公式:2025年インバウンド消費動向調査
そして、2026年4〜6月期も、訪日外国人旅行消費額:2兆5,096億円、前年同期比 +0.2%。
1人当たり旅行支出:24.4万円、前年同期比 +3.3%となっています。
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査2026年4-6月期(1次速報)」
観光庁公式:2026年4〜6月期インバウンド消費動向調査
ここで、少し視点を変えてみたいと思います。
インバウンドというと、「ホテル」「飲食店」「旅行会社」「観光施設」など、観光業に関係する人だけの話だと思ってしまうかもしれません。
でも、本当にそうでしょうか?
私は、インバウンドはもっと広い可能性を持っていると思っています。
それは、日本にいながら、世界のお客様と出会えること。
つまり、「日本を世界市場のテストマーケットとして見る」という考え方です。
「外国人向け」ではなく、「誰に届けるのか?」
ここで、もう一つ重要な変化があります。
2025年の訪日外国人旅行消費額を国・地域別に見ると、
1位:中国
2位:台湾
3位:米国
4位:韓国
5位:香港
となっています。
一方で、2019年と比較すると欧米豪の割合が増えるなど、訪日市場そのものが多様化しています。
出典:観光庁「令和8年版観光白書」
観光庁公式:令和8年版観光白書
つまり、「外国人に売る」だけではなく、「どこの国・地域の、どんな人に届けたいのか?」まで考えることが、これからますます重要になってきます。
国によって、旅行の目的も、興味を持つものも、消費の仕方も異なるからです。
外国人旅行者は、どうやって日本を調べている?
ここも、とても大切なポイントです。
観光庁の調査によると、2024年の訪日旅行で出発前に役に立った情報源として、
SNS:38.9%・動画サイト:38.1% が挙げられています。
出典:観光庁「訪日外国人の消費動向」
観光庁公式:訪日外国人の消費動向
つまり、海外のお客様に知ってもらうためには、「良い商品をつくる」だけでは足りません。
「その魅力を、世界の人が理解できる形で発信する」ことが重要になっています。
写真だけでは伝わらない。商品のスペックだけでも伝わらない。
そこに、「なぜ、これをつくっているのか」「どんな文化から生まれたのか」「どんな人がつくっているのか」という物語が加わることで、「興味」に変わることがあります。
「日本のものだから売れる」わけではない
ここは、海外展開を考える上で、とても重要なところです。
日本製だから売れる。伝統工芸だから売れる。日本文化だから売れる。
残念ながら、それだけではありません。
海外のお客様が知りたいのは、「それが自分にとって、どんな価値を持つのか」だからです。
たとえば、一つの工芸品があったとしても、「江戸時代から続く技法です」という説明だけではなく、「この技法が生まれたのか」「職人は何を大切にしているのか」「現代の暮らしの中で、どう使えるのか」まで伝える。
すると、「商品」から「体験」へ。「モノ」から「物語」へ。
価値の見え方が変わります。
これからのインバウンドは「観光地」から「体験価値」へ
日本を訪れる外国人旅行者にとって、東京や京都などの有名観光地を訪れることはもちろん魅力的です。
でも、何度も日本を訪れる人や、より高い価値を求める旅行者にとっては、「有名な場所に行った」だけではなく、「日本でしかできない体験をした」ことが、大きな価値になる可能性があります。
たとえば、
・職人から直接話を聞く
・茶の文化を体験する
・日本の建築空間に入る
・香りや音を体験する
・地域の人と交流する
・伝統文化の背景を知る
・普段は入れない場所を訪れる
こうした体験です。
高付加価値旅行者が求めるもの
近年、観光庁が力を入れているのが「高付加価値旅行者」の誘致です。
観光庁によると、高付加価値旅行者は、訪日旅行者全体の約2%、約59万人に過ぎません。
しかし、2023年時点で消費額は約19%、約1兆円を占めています。
つまり、人数は少なくても、日本に大きな消費をもたらしている層なのです。
また、観光庁は、高付加価値旅行者について、旺盛な知的好奇心を伴う自然体験や文化消費を通じて、地域の自然・文化・産業などの維持・発展にもつながる可能性を示しています。
出典:観光庁「訪日旅行での高付加価値旅行者の誘致促進」
観光庁公式:高付加価値旅行者の誘致促進
ここからも、「何を売るか」だけではなく、「どんな体験を提供するか」という視点の重要性が見えてきます。
インバウンドは「世界市場のテストマーケティング」
私は、ここが一番重要だと思っています。
海外へ行って、「この商品は海外で売れるだろうか?」と考える。
もちろん、それも一つの方法です。
でも、その前に日本でできることがあります。
日本に来ている外国人のお客様に、実際に見てもらう。説明してみる。体験してもらう。反応を聞いてみる。
例えば、
・どう説明したら伝わるのか
・何に興味を持つのか
・何に感動するのか
・どんな質問をするのか
・価格をどう感じるのか
・どんな体験を求めているのか
これらを、日本にいながら知ることができます。
これは、海外へ行く前の大切なマーケティングになります。
「世界へ行く前に、日本で世界と出会う。」
海外展開というと、「英語が話せない」「海外の人脈がない」「何から始めればいいかわからない」
そんな不安を感じる方もいると思います。
実は、私自身も英語が得意なわけではありません。
それでも海外へ行き、人と出会い、自分の活動や日本文化への想いを伝える中で、次のご縁につながっていきました。
そこで感じたのは、言葉だけが人をつなぐものではないということです。
想い。文化。技術。美意識。
そして、「あなたに知ってほしい」という気持ち。
それらを伝えようとすることで、思いがけない出会いが生まれることがあります。
だから私は、海外展開の最初の一歩は、「売ること」ではなく「出会うこと」だと思っています。
まずは、一人の外国人に伝えてみる
海外展開を始めるために、いきなり海外展示会へ行く必要はありません。
海外向けECサイトをつくる必要もありません。
まずは、目の前にいる一人の外国人のお客様に、自分の文化を伝えてみる。
「これは何ですか?」と聞かれたら、説明してみる。
「なぜ、これを続けているのですか?」と聞かれたら、自分の想いを話してみる。
そして、その反応を見てみる。
すると、「そこに興味を持つんだ!」「そこを質問するんだ!」「こんなところを日本らしいと思うんだ!」という発見があるかもしれません。
自分にとっては当たり前のものが、世界の誰かにとっては、特別な価値を持つものかもしれないのです。
日本は、世界市場を試す場所になり得る
2025年、日本を訪れた外国人は4,268万人を超えました。
そして、2026年7月だけでも344万人を超えています。
旅行消費額も、2025年には9兆4,559億円。
2026年4〜6月期も2兆5,096億円となっています。
今の日本には、世界の人に日本の文化や技術を見てもらい、体験してもらい、反応を知ることができる環境がある。
私は、これを大きなチャンスだと考えています。
だから、インバウンドを単なる「観光」の話としてではなく、「世界市場への入口」として捉えてみてはいかがでしょうか。
海外へ行く前に、日本で世界と出会う。
海外展開は、特別な人だけのものではありません。
あなたが長年続けてきた仕事。あなたが大切にしている技術。あなたが守ってきた文化。あなたが当たり前だと思っている日本の美意識。
もしかしたら、世界の誰かが、それを必要としているかもしれません。
だからこそ、まずは日本で世界と出会う。
一人の外国人に伝えてみる。
一つの反応を知る。
一つのご縁をつくる。
その積み重ねが、日本でのインバウンド対応につながり、海外との交流につながり、やがて海外イベントや海外販売、そして海外企業との共同プロジェクトへと発展していくのだと思います。
世界へ行く前に、日本で世界と出会う。
これが、私が考える「海外展開」の最初の一歩です。
VisionStyle YOUが目指すこと
VisionStyle YOUは、
「日本と世界を繋ぎ、新しい文化の架け橋をつくる」
ことを、これからの大切なテーマとして活動していきます。
日本の文化や技、人。
そして、そこに込められた想いや物語。
それらを現代のビジネスや新しい体験とつなぎ、日本にいながら世界と出会える場をつくる。
そして、その出会いを、次の可能性へつなげていく。
海外へ行くことだけが、海外展開ではありません。
まずは、日本で世界と出会う。
その先に、どんな景色が待っているのか。
私自身も、これから皆さんと一緒に探していきたいと思っています。
あなたの活動を、世界の人が喜んでくれるかもしれません。
その可能性を、まず日本から見つけてみませんか?
データ・参考資料
本記事の数値は、2026年8月30日時点で公表されている政府・公的機関の資料をもとにしています。
■ 日本政府観光局(JNTO)
「訪日外客数(2025年12月推計値)」
2025年年間訪日外客数:4,268万3,600人
公式ページを見る
■ 日本政府観光局(JNTO)
「訪日外客数(2026年7月推計値)」
2026年7月訪日外客数:344万2,100人
公式ページを見る
■ 観光庁
「インバウンド消費動向調査2025年暦年(速報)」
2025年訪日外国人旅行消費額:9兆4,559億円
1人当たり旅行支出:22.9万円
公式ページを見る
■ 観光庁
「インバウンド消費動向調査2026年4-6月期(1次速報)」
2026年4〜6月期訪日外国人旅行消費額:2兆5,096億円
1人当たり旅行支出:24.4万円
公式ページを見る
■ 観光庁
「訪日外国人の消費動向」
訪日旅行の出発前に役立った情報源:SNS 38.9%、動画サイト 38.1%
公式資料を見る
■ 観光庁
「訪日旅行での高付加価値旅行者の誘致促進」
高付加価値旅行者:約2%(約59万人)/消費額:約19%(約1兆円)※2023年時点
公式ページを見る
※本記事の数値は各資料の速報値を含みます。今後、確報値の公表等により変更される場合があります。
